村山平野に四季を通して一番若々しい、そして心がはずむ季節がやってきました。平野に広がる果樹園の木々の芽が膨らみ、小さな色彩を枝の先に無数にちりばめ始めています。間もなく残雪の月山や葉山を背にしてサクランボ、リンゴ、桃等の花がそれぞれ咲き乱れるでしょう。そして果樹園の地面にはタンポポの花が一面に咲き、それはまるで黄色い絨毯のようです。
6月にはさくらんぼが実ります。小さな赤い実が周囲の果樹園をうめつくし、サクランボ狩りに県内外からたくさんの人が訪れます。さくらんぼ畑周辺の道は県内外からの観光客でとても賑やかになり、街道沿いに軒を並べるさくらんぼのお店や園には真っ赤なさくらんぼを買い求めるお客様で一杯になります。
8月ともなれば東根の北にある尾花沢市でスイカの収穫が始まります。良質の黒い土で育てられる尾花沢のスイカは全国的にも有名です。秋になるとブドウやリンゴが実り、晩秋にはラ・フランスが収穫されます。ここ村山平野・東根は、ほんとうに果物が豊富です。
平野を取り囲む山々の残雪もやがて夏に近付くにつれ消えていきます。そしてその雪解け水が平野に流れ込み多くの果物達を育てています。
ここ東根から北へ約20キロのところに尾花沢市があります。そこから西の最上川の方へ約4キロ行くと大石田という最上川の舟運で栄えた商人の町があります。その大石田から東根までも約20キロの距離です。そして東根から南東へ約17キロのところに山寺があります。この尾花沢、大石田、東根、山寺はその昔、松尾芭蕉が歩き句を詠んだところとして知られています。東根市六田地区には「眉はきを面影にして紅の花」そして山寺には「静けさや岩にしみいる蝉の声」等の他たくさんの句碑がこれらの地に建てられています。芭蕉が曽良とともに歩いた村山平野の美しさは今も変わっていません。初夏ともなれば昔と同じように紅の花が街道に咲き始めるでしょう。
果物が実る前のこんな花咲く美しい村山平野に一度足を運び、芭蕉が歩いた道を辿って見てはいかがでしょうか。